スレイヤーズ・サイドストーリー外伝 プロローグ・1


・・・少女は、走っていた。ただひたすらと。「奴ら」から逃げるために。

    ―はあ、はあ、はあ、はあ・・・

木の根に蹴躓き、倒れかかった少女の頬を、炎の矢が掠めていく。

    ―っっ!

もう少しで街があるはずだった。
街にさえつけば何とかなる・・。

     ―街に・・・さえ・・・

 だが本当に如何にかなるのだろうか?
 大きな街に行けば、魔道士協会がある。
 それは事実だ。   だが・・・
 協会が救いの手を差し伸べてくれるのだろうか?
 協会に、奴らにかなう人材がいるのだろうか?

 っていうかその前に、街につくことすら叶わなそうな
 コノ現状を、如何すればいいのか?

 気力だけでもたせてきた体もそろそろ限界だった。
 必死で、倒れ込む様にして足を前に進める。

    ―誰か・・・たす・・・け・・・

 まあ無理である。早々奴等にかなう人なんていないし。
 それ以前にここ誰もいないし。

 ・・・・・・って・・・
    ―危ない!逃げて!

  しかしその叫びが、空を震わせることは無かった。

  もはや声は・・・でなかったのだ。

 地に倒れ付した少女が、倒れる寸前目にしたものは・・・。

     一人の女性。その華奢な外見のシルエット。
   とてもだが、奴等に敵うとは思えない・・・。

    ―せめて・・・彼女だけでも・・・。

  そう思いはするのだが、なんにせよ、体が動かない。

    ―・・だ・・め・・か・・・・


  ―――だがしかし、「奴等」の攻撃は何時まで経ってもやって来なかった。
  ・・・・?

 それは余りにも不可思議な出来事。
   疑問に思い、何とか上体を起こして後方に目をやる。


 ・・・そして少女が見たものは・・・何と言うか・・・
 ・・・・・・余りにも信じがたい事だった。



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