天使の悪戯―プロローグ


煌々と、月の光が降り注ぐ――静かな夜。

少し、大きめの街の郊外の森を流れる川の岸に、2つの人影があった。

一人は女――少女と、女性の中間くらいの微妙な年頃。
      栗色の髪、赤い瞳、華奢な体つき。
      文句のつけようのない美少女だ。

もう一人は男――長身で、長い金髪、青い瞳。
        此方も、やはりかなりの美男子である。

男が、口を開く。

「リナ・・・・・・結婚してくれないか?」

そう、少女の名前はリナ。
――魔を滅するもの(デモンスレイヤー) リナ=インバース
少女は、男の言葉に顔を赤らめ―と、此処までならいい雰囲気なのだが・・・
懐に手をやり、取り出したスリッパで、男をはたく。

スパコ〜ン!!

やたら、軽快な音が響く。

「な〜に馬鹿なこと言ってんのよ、ガウリイ。アメリア達にでも、中てられた?」

先日、セイルーンにて、現国王フィリオネル=エル=ディ=セイルーンの下の娘、
アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンの、婚約披露会があった。
リナ達は、アメリア姫とその相手、双方共に至極関わり深い相手だったので、
内輪だけのその会に参加した・・・公には、後にもっと大きな催し事をするらしいが、
其方には、招待状を送った中にゼフィーリアの赤の竜神の騎士がいると聞いて・・・
要は、逃げ出してきたのである。。

「な、何いってるんだ、リナ!?俺は本気だぞ!!!」

何時に無くまじめな顔して言うガウリイ。
とはいえ、『周囲の状況省みずラブラブ状態』のアメリア達に感化された。というのは、
間違い無くあったのではあるが・・・・・・

「俺は――そりゃ、まあ、あの二人に影響されたってのが無いとはいえないけど――でも、本当にリナのことが好きで・・・・・・」

(好きで・・・・・・・・・『アイツ』には渡したくないんだよ!!!)

その先は言えない・・・・・・しばし、落ちる沈黙。


唯、水の流れる音と風の声、虫の音楽だけが聞こえる中・・・
ガウリイは、そっとリナに近寄る。
リナの瞳を見つめたまま、あくまでも自然に、リナを抱き寄せる。
硬直して、動かないままのリナ
―――リナの肩に手をかけたまま、ガウリイは、そっと顔を近づける。

と、今まで身じろぎ一つしなかったリナが、顔を真っ赤にしつつ、右に顔を背け・・・

そして、一言。

   『ディ、ディ、炸弾陣(ディル・ブランド)〜〜!!!』

 チュッド〜ン!!!

ま、世の中、こんなもんである。


吹っ飛ばされるガウリイ、それを見ようともせず駆けて行くリナ・・・

 其々の思いは兎も角、何はともあれこんな場面から、物語は始まったのである・・・




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